知的資産経営が活用される場面:①事業計画編

前回まで、知的資産がどういうものかを概念と体系からお伝えしてきました。

知的資産そのものはもちろん重要であり、この知的資産を掘り起こすために試行錯誤を繰り返します。しかし、知的資産を掘り起こすことは目的ではありません。この掘り起こした知的資産を把握し、実際の経営現場に反映させてはじめて意味を持つことになります。 

 

このように、知的資産を実際の経営現場に反映させる手法を、知的資産経営と言います。(詳細は「なぜ知的資産経営なのか」を参照ください)

というわけで、今回から知的資産経営がどんな場面で活用されるのかを見ていきましょう。

 

事業計画・経営計画

知的資産経営が活用される場面の最初の例は事業計画・経営計画です。

 

さて、唐突ですが、経営に携わる立場にある皆さんは、事業計画・経営計画は立てているでしょうか。また、立てている場合、どのくらいの頻度で、どのくらい先を見越した計画を立てておられるのでしょう。

中小企業庁の2016年版小規模企業白書によると、小規模事業者(小規模事業者とは「おおむね常時使用する従業員の数が20人(商業又はサービス業は5人)以下の事業者」のことを言います)では、法人で64%、個人事業主で44%が経営計画の作成経験がある、となっています。

この数字を高いと見るか低いと見るかは意見が分かれそうですが、さらに2016年版小規模企業白書では、経営計画の作成経験がある事業者の34%が売上増加となっており、作成経験のない事業者の20%を大きく上回っていることも見逃せない数字です。

 

そのうえで、事業計画・経営計画の作成は、やはり簡単ではありません。

もちろん簡易的にでも作成することはできますが、そもそも事業計画・経営計画を作成する目的は、売上を上げることに他なりません。では、売上を上げるために何を把握していなければならないかという点で、事業計画・経営計画には絶対に欠かせないものがあります。

それが、知的資産です。

知的資産は、事業者の競争力の源泉となる目に見えない強みです。この知的資産を把握できていなければ、売上を上げるために何をしなければならないかが的外れになってしまいます。

 

例えば、よく見かける事業計画・経営計画として、「今期の売上を20%上げるために、○○事業に力を入れる。また、経費削減も図り、○○費を10%削減に努める」といったものがあります。

こうした目的自体は間違いではありません。大事なのは、その目的を達成する根拠を明確にできているか、ということです。

知的資産を把握するということは、事業者の目に見えない強みを把握することであり、その強み(または、弱み)を根拠に達成すべき目的とそのための戦略・戦術を決めていきます。経費を削減すると一言で言っても、その経費が強みを生み出しているのであれば削減は的外れになってしまうのです。

 

知的資産経営は、把握した知的資産をもとに分析し、経営戦略や経営戦術を決めていく手法です。いろいろな経営シーンで活用できますが、基本的には事業計画・経営計画の作成においてもっとも効果が発揮されます。

事業計画・経営計画をしっかりと作成してみたいというお気持ちをもっておられる経営者には、知的資産経営の活用を強く推奨いたします。

 

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