知的資産経営が活かされる場面:⑤BCP・事業継続計画編

「知的資産経営が活かされる場面」の第五回目は、BCP・事業継続計画についてです。

昨今の自然災害の頻発を受けて、BCP・事業継続計画を作成しておくことの重要度は増しています。一方で、現実にBCP・事業継続計画を作成している企業数はなかなか伸びません。経営者の多くはBCP・事業継続計画が必要だと感じているはずですが作成までは至っていないようです。

知的資産経営は、BCP・事業継続計画の作成においても大きく効果を発揮します。予期できない事態が起きてしまった時に、自社の知的資産を把握しておくことは事業を途絶えさせないことにも活かされることになります。

BCP・事業継続計画に必要なもの

改めて、BCP・事業継続計画とはどういうものでしょうか。

BCPとは Business Continuity Plan の略称で、日本語訳で事業継続計画と呼ばれます。「企業が自然災害の緊急事態に遭遇した際に事業の継続を図るための事前の取組み(中小企業庁より)」のことを意味し、東日本大震災が起きた後に本格的に取組みが叫ばれるようになりました。

自然災害のような緊急事態に遭遇すると、自社が被災することで事業を行うことができなくなります。商品製造設備が動かなくなったり、経営者や従業員が被災することで事業が立ち行かなくなることもあるでしょう。また、自社の被災は免れても、取引先が被災することで事業が止まってしまうかもしれません。

このような不測の事態に備えて、自然災害が起きた場合の対策をあらかじめ講じておき、それを計画書に落とし込んでおくものがBCP・事業継続計画となります。

このBCP・事業継続計画の作成にあたって必要になるのが経営資源の把握であることは容易に想像できるでしょう。

具体的には、ヒト・モノ・カネ・情報ということになりますが、これらをきちんと把握するということは意外と難しいものです。自社の経営に備わっている資源は何かと考え出すと、例えば「ヒト」だけ取り上げてみても誰がどのような経営資源と言えるのか体系立てられていないと計画書として落とし込むことはできません。

BCP・事業継続計画と知的資産経営

BCP・事業継続計画の作成で知的資産経営を活かすことができるのは、知的資産という考え方に他なりません。

当コラムの『「知的資産」とは⑥~知的資産の分類:人的資産~』『「知的資産」とは⑦~知的資産の分類:構造資産~』『「知的資産」とは⑧~知的資産の分類:関係資産~』でも触れてきたように、知的資産経営では経営資源を知的資産という観点で分類をします。自社の持つ経営資源が、どういった理由でどんな資産となるのかを分類し、体系立てておくことが知的資産経営では重要になるのです。

その中で、BCP・事業継続計画において特徴的な知的資産は関係資産でもあります。

関係資産は、取引先や取引金融機関、消費者や顧客、株主や債権者といった対外的に関係のある資産です。自然災害で事業が立ち行かなくなった時、対外的な関係にある経営資源でどんな影響がどのくらいあるのか。また、事業再開には誰のどんな助けが必要なのか。ただBCP・事業継続計画として落とし込むだけではなく、関係資産なんだという把握のもとで落とし込むと緊急時の対応をより明確にすることができます。

BCP・事業継続計画は、基本的に自然災害を想定して作成されます。しかし、事業が立ち行かなくなる緊急事態は自然災害だけではありません。感染症が蔓延する事態やリーマンショックのような世界経済の動きも考えられます。経営者や職人さんが交通事故や病気で急に仕事ができなくなることもあるかもしれません。

だからこそBCP・事業継続計画は必要であり、そのためにも知的資産経営を導入することも必要となるのです。

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