製造委託【下請取引の種類】

下請法(下請代金支払遅延防止法)では、4種類の下請取引が対象になることを前回の「下請法と下請取引の種類」で示しました。今回からはこの4種類を具体的に見ていきましょう。

まず、「下請法と下請取引の種類」で示した4種類は、「製造委託」「修理委託」「情報成果物作成委託」「役務提供委託」でした。このうち、今回は「製造委託」についてです。

製造委託は、下請法第二条第一項に示されています。

下請代金支払遅延防止法

第二条第一項

この法律で「製造委託」とは、事業者が業として行う販売若しくは業として請け負う製造(加工を含む。以下同じ。)の目的物たる物品若しくはその半製品、部品、附属品若しくは原材料若しくはこれらの製造に用いる金型又は業として行う物品の修理に必要な部品若しくは原材料の製造を他の事業者に委託すること及び事業者がその使用し又は消費する物品の製造を業として行う場合にその物品若しくはその半製品、部品、附属品若しくは原材料又はこれらの製造に用いる金型の製造を他の事業者に委託することをいう。

条文だと一気に書かれてるので分かり辛いですね。
この第二条第一項を分解しますと、製造委託は4つのタイプに分けることができます。以下、それら4タイプを示しますが、その前に条文中で表現されている「業として」という言葉について触れておきましょう。

「業として」とは、「事業者が、ある行為を反復継続的に行っており、社会通念上、事業の遂行とみることができる場合を指す」ことを言います。(公正取引委員会「下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準(平成15年12月全部改正)」より)
これは、下請法における他の下請取引でも同様になります。

 

では、4つのタイプです。

【 タイプ① 】
物品の販売を行ってる事業者が、その物品や部品などの製造を他の事業者に委託する場合

【 タイプ② 】
物品の製造を行ってる事業者が、その物品や部品などの製造を他の事業者に委託する場合

【 タイプ③ 】
物品の修理を行ってる事業者が、その修理に必要な物品又は原材料の製造を他の事業者に委託する場合

【 タイプ④ 】
自社で使用・消費する物品を製造している事業者が、その物品や部品などの製造を他の事業者に委託する場合

 

ここで「物品」という言葉を使っているのは、事業者の扱う製品等が「動産」であるからです。ですので、住宅といった建築物は対象とはなりませんよ。

また、条文の中にもあるように、製造委託については「金型」も含まれることにも注意です。何か製品を製造するにあたって金型が必要な場合、その金型の製造を委託すると製造委託に該当します。(金型が該当するのは①②④のタイプです)

①②は分かりやすいタイプかと思います。
①のタイプで注意が必要なのは「PB(プライベート・ブランド)」です。販売を行っている事業者が対象ですから、大手小売業者が自社ブランドの商品の製造(いわゆる、プライベート・ブランドですね)を委託する場合、製造委託に該当します。PBの製造の委託を受けている事業者が下請法の説明を受けていない場合は確認しましょう。

③については、修理のみを行っている事業者だけではなく、製造や販売を行っている事業者も修理を業として行っていれば該当します。また、自社で使用する物品を修理する場合にも該当するので注意です。さらにこの③のタイプに限っては、「半製品、部品、付属品及び金型」は対象となりません。

④については、例えば、工作機器を製造する事業者が製造の際に使用する工具も自社で製造している場合だと想像しやすいでしょうか。この工具を製造するための部品を他の事業者に委託すると、この④のタイプに該当します。…「製造」が繰り返されてて分かりにくいですね。(一般的に「梱包材の場合」が例として挙げられますが、私には少し想像しにくい気がして工具を例として挙げました)

 

以上、下請法が適用される下請取引の4種類のうち 、製造委託について取り上げました。

次回は「修理委託」について取り上げます。

 

 

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