知的資産経営が活かされる場面:④事業承継編
「知的資産経営が活かされる場面」の第四回目は、事業承継についてです。
日本の中小企業・小規模事業者にとって2000年以降の重要な課題のひとつとして必ず挙げられる事業承継。今や小規模事業者であってもM&Aが当たり前に検討されるくらい「事業承継≠親族内承継」という時代の中で、知的資産経営が事業承継に活かされるとはどういうことなのでしょうか。
キーワードは「経営の承継」です。
事業承継と二つの承継
事業承継には、大きく分けて二つの承継があると言われています。
一つは、財産の承継です。
事業には必ず財産が生まれます。現金・預金や借入金といった資金はもちろん、株式会社であれば株式ですし合同会社であれば持分です。また、事業に使用する機械設備や、土地・建物といった固定資産も財産です。この財産の承継はとても分かりやすいもので、かつ税金にも絡んでくることから、経営者にとってはまず思い浮かぶ事業承継の在り方となっています。
そしてもう一つは、経営の承継です。
事業が利益を得てきた背景にあるものは何でしょうか。それは、経営者が持っている経営ノウハウであり営業力であり技術力です。そして、従業員の持つ営業力や技術力もまた利益を生み出すでしょう。取引先やお得意先とのやり取り、会社内の雰囲気、金融機関との関係性、と事業を行ってきた中で積み上げ培ってきたものすべてが利益を得てきた背景にあるでしょう。
こうした利益を得るための背景にあるものこそ、本来は承継しなければなりません。家族の誰かに承継しようが、別の会社に引継いでもらおうが、経営者が積み上げてきたものや、一緒に頑張ってきた従業員を承継してこそ事業承継と言えるのです。そして、この経営の承継を実施するために知的資産経営が必要とされます。なぜなら、利益を得るための背景が知的資産そのものだからです。
変化する事業承継のカタチ
中小企業・小規模事業者の事業承継の現場では、これまでは金融機関と士業や地域機関の専門家と連携して事業承継の計画を立てて進めてきました。この方法はこれからも続いてはいきますが、現在はM&Aが主流になる中で売りたい企業と買いたい企業をマッチングさせるプラットフォームの利用もどんどん増加しています。ネットで検索をすれば多くヒットしますし、金融機関も提携を結んでの利用が増えています。
プラットフォームの利用はとても有効ですから、今後も拡大を続けていくでしょう。売りたい企業の評価もしてくれますし、事業価値も査定してくれます。その中で、中小企業・小規模事業者であっても、どれだけの金額で売れて、どれだけの金額で買えるかが、これからの事業承継ではより重要視される流れになっていくと予想しています。
こうして変化していく事業承継において、知的資産経営はどう活かされていくでしょう。
それは、事業承継後の経営力まで見据えた活かし方です。
そもそも事業承継での知的資産経営の役割は、経営の承継にあたって承継後に経営力を増加し強くさせることにあります。経営を承継させることが目的ではなく、経営の承継をきっかけにしてどう経営改善し利益を得ていくかを目的としています。
中小企業・小規模事業者が事業承継を経てさらに強くなれるかどうか。知的資産経営を事業承継に活用させることで、単に引き継がせるだけではない事業承継の実現に寄与することができるのです。