定款の肝を押さえる!:株式会社編①登記事項(中編)

前回から引き続き、株式会社の定款を登記事項から押さえていきましょう。

定款と登記事項の関係や登記事項における商号については前回のコラムをご参照ください。

 

定款「第1章 総則」と登記事項(続き)

定款が「第1章 総則」から始まることは前回で触れました。また、その中の最初が商号について記載されていることもお分かりいただけたと思います。

さらに、総則では登記事項に必要な項目が他の章より多く記載されていきます。順番に触れていきましょう。

尚、今回の例で登場する仮の株式会社は、こちらも引き続き「株式会社法人の肝」とします。

② 目的

定款の第2条には、目的が定められています。

(目 的)
第2条 当会社は、次の事業を営むことを目的とする。
  1. ・・・・・・・
  2. ・・・・・・・
  3. ・・・・・・・
  4. 前各号に附帯する一切の事業

と記載されます。

この目的には、どんな事業を行うか具体的に示すことになります。

登記事項証明書にはこの目的が表示されていますので、現状の会社で行っている事業と照らし合わせて、記載されていない事業を行っている場合には定款を変更して変更登記の申請もしましょう。

また、これから進出したい新しい事業を考えているならば、この目的の部分にどう記載するかも検討が必要です。会社の事業は、この目的に記載されていなければ原則行うことができません。特に許認可申請をしなければならない事業を行う場合、登記事項証明書と定款の提出もしなければならず、記載がないと許認可が下りません。必要であれば定款変更と変更登記申請を行ってください。

どのように記載したらよいか分からない場合には、定款の目的を調べることができるサイトを参考にされてもいいでしょう。「定款 目的」で検索すると数多くヒットします。

目的を見直すことは、現状の会社の事業を見直す効果もあります。自身の会社がどんな事業をする会社なのか、初心に戻った感覚で知ることができます。また、会社の将来について考えるきっかけにもなりますので、確認してみましょう。

③ 本店の所在地

目的に続いて記載されるのは、株式会社の本店所在地です。

文字通り本店(本社)が存在する場所を定めてありますが、この本店所在地は定款と登記事項証明書で違いが見られる個所となります。

(本店の所在地)
第3条 当会社は、本店を福井県福井市に置く。

定款では、本店所在地を上記のように記載します。

ここで登記事項証明書との大きな違いは、定款では市区町村まででいいのに対し、登記事項証明書では地番号まで特定して記載されるというところです。

所在地は登記事項であるため、会社の所在地が変われば、その都度変更登記の申請をしなければなりません。定款も登記事項証明書と同じように地番号まで記載が必要となると、所在地が変わるたびに株主総会を開催して定款を変更することになりますが、その必要はないということですね。

ただし、定款に記載されている市区町村を越えて所在地を変更する場合には、定款の変更も必要になるので注意が必要です。

また、定款では所在地について地番号まで記載しなくてもよい、というだけで記載しても一向に構いません。そのため、定款によっては地番号まで記載されているものもあります。もし、ご覧になっている自社の定款の本店所在地が地番号まで記載されている場合は、登記事項証明書や現在の所在地と相違がないかチェックし、違っているならば修正しましょう。

さらに、支店については、登記はしなければなりませんが、定款には記載する必要がありません。そのため、登記事項証明書には支店の記載があって定款にはなくても、定款変更をする必要はありません。ただし、支店についても定款には記載しなくてもよい、というだけです。ですので、支店が記載されている定款もありますので、この場合にも登記事項証明書や現在の支店の所在地との相違をチェックしましょう。

④ 公告の方法

定款の総則に記載される登記事項の中で、最後に登場するのが公告についてです。

公告とは、法令上に定められている特定の事項を広く一般に知らせることをいいます。株式会社では、毎年ごとの決算や債権者・株主に向けて会社の合併や解散等を知らせるために公告を行います。

この公告の方法は、定款で定めることになっています。

(公告の方法)
第4条 当会社の公告は、官報に掲載する。

という記載が中小企業・小規模事業者の非公開株式会社ではもっとも一般的なものとなっています。

この公告の方法については、定款では必ず記載しなければならないわけではありません。ただ、かつての旧商法では必ず記載が必要であったり、現在も登記上では登記事項なので記載している定款がほとんどです。

公告の方法には、①官報に掲載、②日刊新聞紙に掲載、③電子公告、の3つの方法があり、定款に公告の方法を定めない場合は「①官報に掲載」が登記事項証明書に記載されます。ですので、「②日刊新聞紙に掲載」又は「③電子公告」を採用したい場合には、その旨を定款に記載しなければなりません。

中小企業・小規模事業者においては、多額の費用の面から日刊新聞紙への掲載は現実的ではありません。また、最近は中小企業・小規模事業者でも自社ホームページを持っていることが当たり前になっていることもあり、電子公告を採用することもあります。ただ、当事務所では電子公告は勧めておりません。毎年の決算公告をホームページで行うということは、自社の財務情報をネット上で誰でも閲覧できるようにするということです。電子公告を採用する場合は、このリスクを充分すぎるほど考慮するようにしてください。間違っても、費用の側面だけで安易に採用しないようにしましょう。

 

今回は、定款に記載する登記事項に必要な総則部分について触れました。

次回は総則以外で登記事項となる箇所に入っていきます。

 

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